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6章 最新の技術

 

6章 最新の技術

最近では、3D関連の技術が進歩しています。そのため、手術を事前にコンピューター上で行い、手術後の顔がどのように変化するかなどを手術前に予想するソフトもあります。私は、患者さんのCT情報から3D顔面の骨の模型を作り治療に役立てています。

これにより、手術前に患者さんの頭蓋骨とほぼ同じ模型を手に入れることができるのです。私は、できるだけこの模型の骨を使って模擬手術をするようにしています。運動会でも学芸会でも予行練習をしておくと本番が上手くいくのと同じです。

模型があれば、実際に患者さんの手術をする時には、私は、既にその患者さんの手術をしたことがある状態なのです。

患者さんの解剖学的特徴などを把握できていますので、自信をもって手術を行うことができるのです。

 

 

これは、ある顎変形症患者さんの模型です。

模型を見比べてみると顔が少し曲がっていることがわかります。どのようにしたら顔面形態を修正できるのか、事前に目視して確認することができるのです。顔の真ん中にある上アゴの骨を修正して、下アゴを修正すると顔の歪みがなおせることがわかります。

この技術を全て、コンピューター上でシュミレーションし、顔の軟組織まで予測するという技術もあります。

当クリニックでは、各患者さんには、過去の同じような顔の変形の方の治療前と治療後の写真をお見せして、大体こういう風に治療しますよとお話しています。

しゃくれを治したり、顔をおおよそ真っ直ぐにするということできますが、コンピューターシュミレーションとまったく同じ結果を作るという約束はできません。それが手術というものであり、現実なのです。

 

サージェリーファースト

読んで字のごとく、はじめに手術をするということです。顎矯正手術の順序のところ、記したように、通常であれば、手術の時にぴったり噛むように手術前にしっかりと歯列矯正を行ってから顎矯正手術を行います。

ですから、手術前に6ヶ月~2年程度の術前矯正期間があります。サージェリーファーストは、先にアゴのずれを改善してから歯列矯正をしようという考え方です。

メリットとしては、はじめに顔の形が良くなるということです。

また、治療全体の期間が短くなるという報告もあります。適応症を間違えなければ、有用な方法であると思いますが、全ての症例でできるという訳ではないです。

 

顎矯正外科の歴史

顔の形を土台から良くすることのできる顎矯正手術ができたのは1960年代で、最近のことです。顔の形や咬み合わせを劇的に改善できる手術であるのにもかかわらず、口の中から行うため、顔にほとんど傷が残りません。

抗生物質の無かった時代には、細菌が繁殖する“汚い口の中”から手術を行うということはとても考えられませんでした。抗生物質の登場などの進歩などの時代背景もあり、鶴木隆の師匠であるオブゲザー教授は、1957年に下アゴの手術、1963年に、上下のアゴの同時手術を実現しました。

この手術法の誕生は、顔面奇形による悩みを抱えていた世界中の人々を悩みから解放することを現実のものとしたのです。

鶴木隆は、1977年よりスイスのチューリヒ大学顎外科に3年間留学し、オブゲザー教授より顎矯正手術を直伝して頂きました。帰国後、1982年より30年以上に渡りこの治療・手術を日本に普及させるべく頑張っています。

 

どうやってアゴの位置を変えるのか?~土台から顔をなおすのか~

上アゴの手術

現在、顎矯正外科で最も用いられている上顎骨の手術は、ルフォーⅠ型という手術です。この手術は、顔の中心にある上あごの骨を大事な血管・神経をつないだまま分離し、3次元的に自由に位置を変えられるというものです。

この手術により顔の中心部の変形を改善することができるのです。
厚生労働省の公表している高難度手術件数によりますと私の鶴木クリニック医科歯科は、上顎骨形成術を日本で最も多く行っているクリニックの1つであることが分かります。私が習ってきた手術なので当たり前といえば当たり前の話ですが…。

 

下アゴの手術

がく矯正外科で最も頻繁に用いられる下アゴの手術は、下顎矢状分割術といいます。この手術の登場は画期的なことでした。この手術は、下アゴの神経血管をつないだまま3次元的に自由に移動させるということを可能にしました。この手術は、オブゲザー教授が1957年に考案し、その適応症の広さのため世界中に広まりました。

日本では、私の師匠である東京歯科大学の高橋庄二郎先生がはじめて行いました。手術の構造上、下アゴの中にある下歯槽神経という神経を損傷するリスクがあります。がく矯正外科にて、顔を劇的に改善させるとともに、安定して行えるようになったのは、上アゴと下アゴの手術を組み合わせによるものなのです。

がく矯正外科にて、顔を劇的に改善させるとともに、安定して行えるようになったのは、上アゴと下アゴの手術を組み合わせによるものなのです。